分別あるパンク壮年。
音楽通の吉田君が
教室の後ろのドアから顔を出した。
見た?
早朝の教室は、まだ人もまばら。
ストーブの前で
かばんの雪をほろって、いた時だ。
よっぽど話をしたかったらしく
感情を表に出さない
タイプの彼がわざわざ、
僕の教室まで来たのだ。
1982年冬。唯一の音楽情報番組。
ベストヒットUSA。
見たよ!
あの目。
凄いよ、あれ。
人殺しの目だよ。
実は僕も誰かに喋りたく
うずうずしていたのだ。
鬼の目、ジョニー・ロットン。
飛び跳ねる、スティーヴ・ジョーンズ。
ポール・クック、小さっ。
シド・ヴィシャス、細。
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Sex Pistols
「Never Mind The Bollocks 勝手にしやがれ」
女の子にふられた雪の夜。
17歳の少年に、復活すべし!と、
大きな炎をともらせてくれたアルバム。
よおおーし、
あすからTシャツを破って着るぞ!(冬だけど)
虫ピンも口に刺そう。
そんな10代だったが今の僕はどうだ?
虫ピンは痛いからやめたほうがいい。
破傷風も恐いし、痕も残るし。
Tシャツは破らなくていいな
首元がすでにダルダルになってるし。
うーっん
人は皆、歳をとる。
もう昔のように
拳を振り上げる勢いは無いのだが
俺には経験値という拳があるのだぞ!
勢いは経験値でカバーするのだ!
とほほほ。なんだか、じじいの遠吠えだな。うーん。
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▲ 徒歩5階 若者息切れ
俺 乱れず いとおかし。
※初稿20100704