盲目な行列
平日の早朝、駅前。
会社へ向かうOLやサラリーマンを横目に
長い人の行列ができている。
リュックを背負ったよれたTシャツと
ジーンズをはいた大学生風。
スエット上下で髪を束ね
おでこを出している女性。
猫背の痩せた日焼け顔、煙草をくわえた男性。
パチンコ屋開店前の行列。
いつも微妙な気分になる。
何だろう?
………………
カウントダウンが始まる。
3 – 2 – 1 – 0 !
歓声が巻起こる!
マスコミのカメラに囲まれ店に入っていく。
店員とハイタッチまでしているぞ!
2日前から並んでいます…
山梨から来ました…
あれれ、もう既に、開封しちゃってるよ!
新商品発売の行列。
いつも微妙な気分になる。
何だろう?
………………
パンパンにふくれた袋。
甘栗が詰め込まれている。
満面の笑みの おかあ や おばあ。
店長といざこざを起こしてる おじい もいたりする。
詰め放題100円、早い者勝ち。
両脇に洋服を抱えている。
人の肩越しから手を伸ばしている。
はっぴを羽織った男が焚きつける。
さながら、そこには我を忘れた己が見え隠れする…
バーゲン会場、90%OFF!
いつも微妙な気分になる。
何だろう?
………………
ん。
ちょっと待てよ。
はたから見たら…
俯瞰で見たら…
もしかしたら、
自分もそうじゃないか…
日曜日の早朝。
薄暗い神社の境内。
区画毎に並んでいなければ
ゴミ集積所と見間違えるような風景。
乱雑に置かれた汚れた段ボール。
ゴソゴソと我楽苦多をあさる人々。
自分もその中に居たりする。
早朝の骨董市の風景
ん、これはそんなに微妙な気分にはならないな。
何だろう?
当事者だからか?
そっか。ごめんよ。自分勝手だったな。
パチンコや、新製品、詰め放題に群がる人たちと
同じじゃないか!おれだって。
うーん。

▲趣味、嗜好に盲目になりすぎてはいけない。冷静に。ちゃんと自分を見ていたい。
嗜好ではない、これは仕入れ仕事。これで塩や味噌を買っているし。
※初稿20100718