大手町の親子。 | MAREBITO古道具

大手町の親子。

大手町の親子。

ひとけのない休日。
証券会社の玄関先でポーズをとる息子。
心配そうに、カメラを構えた父を見ている母。
夕日を遮るよう、額に右手をあてている母の姿。

東京、大手町。オフィス街の路地で見かけた風景。
そこには、カツカツとしたサラリーマンの姿は無く
微笑ましい家族の一コマがあった。

僕にも同じ様な事があったな、と。
ふと思い出す。

東京に出てきた頃の話。


____________


デザイン会社に勤めていた頃、
父と母が東京へやって来た。
東京観光がてら、どうしても見たいというので
休日の会社に案内する。
両親がいる事務所はとても場違いで、
収まりの悪い違和感があった。

古い雑居ビルの一室に親子3人。
自分が制作に携わった
下着のポスターが壁に貼ってあった。
ピンクのブラジャーのアップ写真。

あいまいな表情の父と母。


………


人の多さと電車移動で疲れた父と母。
早めに観光を切り上げ、
コンビニで買ったつまみで晩酌をする。
緊張がほぐれ、安心したらしく、
珍しく母まで少し酔っていた。
その夜、一間のアパートに毛布を敷いて、
親子3人で眠った。




それから12年、母の七回忌の夜。
がらんとした実家、押し入れから
母のアルバムが出てきた。
以前は開けなかったアルバム。
若い母と友達が写っている写真。
慰安旅行の写真。
いとこの結婚式の写真。
その他、ほとんどが姪っ子の
赤ん坊の時の写真だったが、
その中に見たことの無い
東京での自分の姿がある。

飛行場の写真や都庁前での写真、
いつ撮ったのだ?アパートの写真まである。
なんと、会社に貼ってあったブラジャーまで。

一瞬手が止まり、アルバムを閉じてしまった。




まだ、ちょっと早すぎたな、アルバムを見るのは…

▲猿の親子もいます。いざMAREBITOへ!
※過去のコラムに修正、加筆しています。初稿 20091106

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