通勤教育。 | MAREBITO古道具

通勤教育。

通勤教育。

中目黒から日比谷線に
乗ってきた母と娘。
清楚な白のワンピース、
奇麗なお母さん。

その隣には制帽と紺ブレを着た、
ちっちゃな女の子。
おもちゃのような赤い靴を
ブラブラさせている。

母  :「じゃあ、次はしりとりね」
女の子:「うん」
母  :「こま」
女の子:「まんが」
母  :「ガメラ」
女の子:「らっぱ」
母  :「パンダ」
女の子:「だちょう」
母  : もぉ!
母  :「だちょうはダメだったって言ってるでしょ、何度も!」
女の子:「……」
母  :「ちゃんとやってくれないとほんとに困るンだからネ。
じゃあ、連続で言ってみてくれる」
女の子:「やきにく」「くらまえ」「えんげい」「いくら」
「らっぱ」「ぱん……だ」「だ……だ……」   


電車が広尾の駅に到着した。

大きなカバンを背負い、
手をつなぎながら降りていった、女の子。
母の白いワンピースが颯爽と揺れている。
身体よりも大きな、
女の子のカバンも揺れてる。

階段を登っている赤い靴の残像が
地下鉄の黒い窓に残っていた。


※過去に投稿したコラムに
加筆してアップしています。

初稿 20090930

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