9月13日頃の記憶
お店の前のアパート、玄関先で涼む老人。
懐かしき昭和の一コマ、ステテコ風で
我の創作作業を凝視している。
いや見ているのかわからない程、宙を漂う目線、
何も考えていないと思われる表情。
只々、ゴミ収集箱の上に首だけ見える。
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MAREBITOを休憩所と勘違いしているお婆が、
慌てて声をかけてきた。
向かいのおじいさん倒れてるわよ!
動きはゆっくりだが、髪の毛が逆立っているように見えた。
ん?
いつもの事だよ、寝てるだけだから…
しかし、お婆の表情半端ない!
慌てて外に出てみると、
ホントだ!おじいが倒れている!
道路を横切りおじいに近づく。
ゴミ箱の横、地面に横たわり目をつむっている。
うわ、やばいぞこれは!
おじさん大丈夫か?
声をかけるも目を開かない。
大丈夫か!我の声も大きくなる。
だらんと力なく、横たわっていた指先が動く。
ん!
なんだ?
Vサインをしている。
!
近づいてみると、銀の遮断マットを轢いた上で
ただただ寝転がっていただけだった…
いやいやいやいや、ドッキリか!おい!
目を開けろや。
紛らわしいとこで寝てんじゃねーぞ。
なんじゃ、そのVサインは!
手術した夏ばっぱを心配し、春子が病室を覗き込む
シーンを思い出したわ!ベロを出したあれ。
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上記の出来事は3週間程前の話。
今朝、お店の前が騒がしい。
大家らしき人が窓から部屋の中を覗いている。
しばらくして警官、救急車も到着した。
警官は窓を壊してよいか、
大家に確認している様子だ…
なんだか悲しくなってきて、
午前の作業を途中で切り上げ、
早足でふらふらと帰宅した。
Vサイン、担架の上でも見せてくれよ。
ドッキリでもいいからさ。
2024年9月25日(水)11:10