じいの極楽と俺の最悪。
血流が悪くなるので、もうない。
時間が沢山あった若き頃。
経験したであろう、腕枕。
目を覚ますと、腕を枕に彼女の寝息。
守ってあげたい、彼女の未来。
ちょっと開き加減の口元に
躰の芯に残っている
鈍い疲れも吹っ飛んでしまう。
彼女の寝顔。
嗚呼!なんて、しあわせなんだろう。
………………………
スポーツクラブに行って汗を流す。
サウナに入り、湯船に浸かる。
最後はマッサージ機で締める。
そう、僕の小っちゃな至福フルコース。
が、
至福を奪いとる、「じい」が居る。
クラブオープン時から居ると
思われる地元の主が。
2台あるマッサージ機。
片方を己の昼寝用ベットとして
使用しておるのだ。
ももひきのママ、
1時間ほど身動きせずに
昼寝をされておる。
その寝顔は正に、
小学生の時に見た
おじいちゃん最後の顔なのだ。
お通夜の時の顔!
お花に囲まれたおじいちゃん。
口が大きく開け放たれ、
縮れた毛髪と、ツヤのない肌。
息をしているのか心配して、
クラブのおっさんが
口元に手をかざしていたのを
見たこともある。
だれも注意できない、地元の長老「じい」。
目を覚まさない口を開けた「じい」のイビキ。
守ってあげたくない、未来が近い「じい」。
俺の至福の邪魔をする、「じい」の寝顔。
嗚呼!極楽、「じい」の寝顔。
嗚呼!最悪、今日の俺。
なんて、こった。
残り時間、少ないのわかるけど。ルールは守ろうよ。
おひとり様、極楽は15分。
▲ダークサイドなMAREBITO主。茅場町に居ます。
初稿20100207