通勤教育   | MAREBITO古道具

通勤教育  

通勤教育  2015.1127

中目黒から日比谷線に乗った。

清楚な白のワンピース。
奇麗なお母さん。
その隣には
制帽と紺ブレを着た、ちっちゃな女の子。

おもちゃのような赤い靴を
ブラブラさせている。


平日昼間なのに混んでいる車内。
二人の前に立つ。


母  :「じゃあ、次はしりとりね」

女の子:「うん」

母  :「こま」

女の子:「まんが」

母  :「ガメラ」

女の子:「らっぱ」

母  :「パンダ」

女の子:「だちょう」

母  :もぉ! 

母  :「“だちょう”はダメだったって
言ってるでしょ、何度も!」

女の子:「 ……… 」

母  :「ちゃんとやってくれないと
ほんとに困るンだからネ。
じゃあ、連続で言ってみてくれる」

女の子:「やきにく」

「くらまえ」

「えんげい」

「いくら」

「らっぱ」

「ぱん……だ」

「 だ…… だ…… 」


電車が広尾の駅に到着した。
大きなカバンを背負い、
手をつなぎながら降りていった女の子。

母の白いワンピースが颯爽と揺れている。
身体よりも大きな、女の子のカバンも揺れてる。

階段を登っている赤い靴の残像が
地下鉄の黒い窓に残っていた。

子供の落書き電車あります。


初稿 2015.1127

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